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主役はVR ゲームショウで見えた可能性

仮想の世界にあたかも自分がいるかのような体験ができる技術、VR=バーチャルリアリティ。いま開かれている世界有数のゲームの展示会「東京ゲームショウ」は、VRが主役です。国内外のメーカーはなぜこぞってVRに参入するのか?そこにはゲームにとどまらない、VRが秘めている将来の可能性があります。(経済部 江崎大輔記者)

ことしはVR元年

千葉市の幕張メッセで9月15日に開幕したことしの東京ゲームショウ(一般公開は9月17~18日)。関係者向けの公開日に会場を訪れると、目立ったのはVRの機器やゲームソフトでした。ことしは、国内外のメーカーがこぞって参入し、「VR元年」とも言われています。

10月にVRの機器の世界同時発売を予定しているソニー・インタラクティブエンタテインメントもゲームショウに出展。会場には発売前の製品が約50台ずらりと並べられ、来場者は仮想現実の世界で海中遊泳やキャラクターとの会話を楽しむことができます。

私も海中遊泳を体験しました。VRのゴーグル型端末をつけて海底に潜っていく時には、まわりを見まわすと魚やクラゲが泳いでいて、ゲームだということを忘れて実際に海の中にいるような不思議な感覚になりました。また、遊泳中に突然サメに襲われた時には、ゲームだと分かっていながらも本当に恐怖を覚えました。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント、グローバル商品企画部の高橋泰生課長は「ゲームにVRを導入することで多くの人に体験してもらえる。ゲーム以外でも映画の世界に入ってみたり、行ったことがないところに行ってみたりと新しい体験ができるようにして産業を大きくしていきたい」と期待感を示していました。

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ほかにも人間の瞳の動きから目線を感知してゲームを操作する技術を展示しているFOVEや、腕に巻いたコントローラーでゲーム内の物体を触る感覚の実現を目指しているH2Lなど多くのベンチャー企業がきらりと光るユニークな技術を展示していました。

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H2Lの展示

高まる海外勢の存在感

VR元年のことしの東京ゲームショウで存在感を示していたのが海外勢です。台湾や中国、アメリカなど海外の5つの国と地域から10社がVRの関連製品を出展するため、初めて参加しました。

大がかりなブースを構えた台湾のスマートフォンメーカーHTCを取材すると、意外にも見据えているのは“ゲームの先”でした。スマートフォンの分野では世界有数の企業となったHTCは、ことし4月からVRの機器の販売に乗り出しました。

スマートフォンの製造で培った技術をいかしてVR機器の量産化を進め、日本のほかにアメリカや中国でも販売攻勢を強めています。将来、医療や教育、観光といった、さまざまな産業でVRの活用が進んだときに、その基盤となる技術を提供する戦略です。

HTC日本法人の玉野浩社長は、「VRはビジネスや生活を変えると考えている。ゲームは入り口であって、車の設計や建築、医療などありとあらゆる産業でVRを使いたいという声があり、VRの技術で支援していきたい」と話していました。

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本当の可能性はゲーム以外に

三菱総合研究所の予測では、VRの関連製品の市場規模は、2025年には世界で去年(2015年)の3倍を超える8000億円規模に拡大する見通しです。

こうしたVRの可能性にいち早く目を付け、積極的に投資を進めている企業と言えば、マーク・ザッカーバーグCEO率いる米フェイスブックです。2014年にVRの開発会社、オキュラスVRを20億ドル(約2000億円)で買収した際、ザッカーバーグCEOは「VRは未来の社会のプラットフォームになる」と断言しました。

このほか、米マイクロソフトや韓国のサムスン電子などもこの分野に参入しています。国際的に活動するグローバル企業は、VRが巨大市場に成長する可能性をしたたかに感じとって、将来、大きな利益が得られるようVRの産業を後おししようとしています。

どこまで進化し 社会をどう変えるか

まずはゲームという形で触れる機会が増えそうなVRですが、その先に広がる用途によって大きく変わるであろう社会。技術の進化のスピードを考えれば、予想以上に近い未来にその変化がやってくるのかもしれませんし、そんな社会の到来には期待が膨らみます。

ただゴーグル型端末は重くて、長時間身につけるには負担になりますし、ゲームの内容によっては仮想空間にいることで“酔い”に似た感覚を覚えることもあり、ハード・ソフト両面でまだ課題があるとも感じました。技術がどこまで進化し、社会をどう変えていくのか、安全面も含めてしっかり見ていく必要がありそうです。

江崎大輔
経済部
江崎 大輔記者