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ソフトバンク孫社長の大勝負 ARM買収

通信大手のソフトバンクグループは18日、イギリスに本社を置く世界的な半導体開発会社「ARMホールディングス」をおよそ3兆3000億円で買収すると発表しました。巨額買収のねらいは「パラダイムシフト」という孫正義社長に聞きました。(経済部・加藤陽平記者)

次のパラダイムシフトはIoT

ソフトバンクによるARMの買収額はおよそ240億ポンド(日本円でおよそ3兆3000億円) 日本企業による海外企業の買収としては、過去最大規模となります。買収額の大きさを見ても、ソフトバンクが大きな勝負に出たのは明らかです。

その理由について、ソフトバンクの孫正義社長は、ロンドンで開いた記者会見で、「大きな賭けであるが、次の大きなパラダイムシフトはIoTになる。そのために欠かせない半導体の技術を持つアームと力を合わせる」と表現しました。

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IoTとは、家電製品や自動運転車、工場の生産設備などあらゆるモノに、センサーと通信機能を持たせ、インターネットでつなぐ技術です。今、アメリカ、ドイツ、日本を中心に各国が機器の制御などの規格の国際標準化を目指して競争を繰り広げているほか、各企業も次の成長分野として技術や製品の開発にしのぎを削っています。

ソフトバンクが買収するARMは半導体の開発会社で、その基本設計に基づいて作られた半導体製品は、消費電力が少ないのが特徴です。世界のスマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器向けでは圧倒的なシェアを持っています。

IoTの世界では、センサーや通信を制御する半導体製品をあらゆるモノに組み込む必要があることから、ソフトバンクは、ARMを手中にすることでIoTの戦略を優位に進めることができると考えています。

Q:3兆円の巨額買収額に見合う投資なのかという懸念が出ていることについてどう考えますか。

A:IoTの世界になると、ARMのチップがあらゆるモノに入ります。そして、インターネットにつながらないといけないが、そのための通信回線をソフトバンクは持っています。ソフトバンクとARMが力を合わせることによって、IoTの世界が実現しやすくなります。そういう意味では、シナジー効果は必ず出ます。

このIoTに、今後10年間くらい、私の情熱を注ぎたい。そのやる気みたいなものがふつふつと沸いてきたのです。また、3兆円の投資を、売り上げから全額回収しなくても、少なくともARMの利益が急激に伸びていけば、その利益に見合ってさらに何倍かの価値が会社につくと考えています。

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なぜ今、イギリスに投資?

ソフトバンクは、ARMの買収にあたって、ARMの従業員の数を向こう5年間で少なくとも倍増させ、グループ内の独立した企業として引き続き、イギリスを本拠地に事業を行っていくとしています。

これについて、イギリスのハモンド財務相は「アジアからイギリスへの投資としては、過去最大だ。海外の投資家の間でイギリスの魅力が失われていないことを示した」と述べ、歓迎する姿勢を示しました。

Q:ことし6月、イギリスが国民投票でEUからの離脱を決めましたが、事業の拠点をイギリスからヨーロッパのほかの国に移転することを検討する動きも出ています。イギリスに拠点を残すことに懸念はないのでしょうか。

A:イギリスのEU離脱に伴って最終的にどういうルールになるのか、イギリス政府自体も検討しているところだと思います。イギリス政府側から直接聞いた話によると、高い技術力を持った雇用については、できるだけ続けやすくする配慮が、これから検討されていくのではないでしょうか。少なくとも、ARMが本社を置くケンブリッジという土地に優秀な頭脳が集まっているから、その人材は活用できるのではないかと思っています。

イギリスのEU離脱で、多くの人がイギリスについて心配しているところなので、逆にわれわれに対する支持は取りやすく、歓迎されるという状況にはあると思っています。

Q:次々と企業買収を繰り返し、今度は半導体事業への参入ということですが、ソフトバンクという会社は「何の会社」なのでしょうか。また、将来、「どんな会社」にするつもりですか。

A:ソフトバンクは、総合的なインターネットの会社です。インターネットのインフラも提供するし、ヤフーのようなソフト的なサービスもある。そこに半導体製品の基本設計を提供するARMが加わることで、さらに手がける範囲が広がり、総合的なインターネットを提供する会社になっていくと思っています。

取材を終えて

孫社長のインタビューは19日の夜、東京の本社で行いました。この日の夕方、ロンドンから戻ったばかりということで、その行動力と体力は大変なものだと感じました。

一方、今回の3兆円余りの投資の原資には、私たちの携帯電話からの収入も含まれます。それだけに、ソフトバンクが巨額の買収額に見合った成果をどこまで実現できるのか長期的に見ていきたいと思います。

加藤陽平
経済部
加藤 陽平 記者