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外国人の手料理もシェア!?
問題解決の新サービス

民泊やライドシェアなどの新しいサービスが次々と登場しています。”シェアリングエコノミー(共有型経済)”と呼ばれ、この分野ではエアビーアンドビーやウーバーなど海外の企業が目立っていますが、力を入れる日本の会社も登場しています。
IT事業を手がけるガイアックスは、みずからさまざまなサービスを手がけるほか、社長の上田祐司さん(41)は関連企業約80社を束ねてシェアリングエコノミー協会という団体を取りまとめ、規制緩和などを政府に求める活動も行っています。「シェアリングサービスは資本主義の問題点を解決する!」と語る上田社長に話を聞きました。(経済部 野口恭平)

外国人の“手料理”もシェア!?

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ガイアックスは、1999年に上田社長が24歳で創業したIT企業です。
企業が社内で社員向けに使うSNSの運営や占いなどのウェブコンテンツの作成、それにブログへの有害な書き込みの監視ビジネスなどを手がけていますが、いま新規事業として最も力を入れているのがシェアリングサービスです。

ライドシェアは、スマートフォンのアプリを使ってインターネット上で自分と同じ目的地に行きたい人をマッチングして、自分が運転する車にほかの人が相乗りするものです。

日本では一般の人が有料で運転サービスを提供することを白タク行為として禁止していることから、この会社はガソリン代や高速代などの費用を同乗者どうしで”割り勘”する仕組みになっています。いまのところ会社は手数料を求めていません。

このため、直接の収益とはなりませんが、会社は将来の規制緩和を見越して、いまのうちにユーザーを確保して新規市場で優位に立つことを狙っています。

ほかには料理のシェアも手がけています。対象は外国人の“手料理”。
日本に住んでいる外国人と海外の家庭料理に関心がある日本の人をマッチングして、外国人の自宅で一緒に料理を楽しんだり、料理方法を学んだりできるものです。

「料理を楽しむだけでなく、会話を通じて外国語の勉強につながった」「日本にいながら外国の文化に触れることができた」といったユーザからの声も寄せられているということです。

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ネットで他人をつなげる力

Q:シェアリングを事業として手がけるようになったきっかけは何でしょうか。

上田:個人的な体験が大きかったです。海外からの旅行者を受け入れて無償で自宅に泊める「カウチサーフィン」というネットサービスをもともと使っていて、何十人も受け入れていましたが、2011年の原発事故のあと見ず知らずの外国人が「うちにおいでよ」とメッセージをくれたんです。

同じサービスのユーザーどうしで一体感が生まれたんだと思います。この時の経験からネットでも赤の他人どうしがつながることで、リアルの生活でそれぞれの悩みを解決したり、ひいては社会問題を解決することができるのではないかと感じたのです。

他人をつなげる力はボランティアで発揮

シェアリングによるつながる力が発揮されたのは熊本地震の支援活動だったと上田社長は言います。
ことし4月に発生した地震のあと、民泊を仲介するエアビーアンドビーは被災者に無料で宿を提供する家主を募集する取り組みを行いました。
ガイアックスもライドシェアの仕組みを使って熊本県に向かうボランティアを対象に支援を行いました。本来は同乗者が負担する”割り勘”の費用を会社が負担しました。

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Q:支援活動を通じてどんな実感を持ちましたか。

上田:ライドシェアの取り組みでは関東や関西から熊本県へ向かうのに約40人が支援サービスを利用しました。災害時には行政機関の”公助”だけでは避難所が足りなくなったり、高齢者や障害者など被災者の状況に合わせた支援が十分ではないことがあります。

支援物資を送るだけでなく、場所や乗り物など遊休資産をシェアしていく”共助”にこそシェアリングサービスが活用できるのではないでしょうか。スマホの普及が進み、赤の他人とのコミュニケーションに抵抗がなくなってきたことから、今回の熊本地震ではこうしたサービスが支援にも活用され始めたのだと思います。

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シェアリングエコノミーは“資本主義を超える”

Q:日本経済は人口減少などの構造的な課題によって、高い成長や消費の拡大が期待しにくいという指摘もあります。上田社長はシェアリングエコノミーはこうした停滞感から抜け出す手段になる可能性があると考えているそうですが、具体的にはどういうことですか。

上田:資本主義経済では、モノを所有することに価値観が置かれていますが、街を見渡しても後部座席が空いている車が走っていたり、駐車場にも車が埋まっていたりとモノがあふれ返っていて、行きつくところまで来ていると思います。

シェアリングサービスはこうした問題を解決し、資本主義経済とは違った新たな経済を作り出す可能性があると思います。相乗りにしても、自宅で一緒にご飯を食べることにしても、ニーズがある人たちをマッチングさせてその場を提供するプラットフォームとして少額を課金していこうというビジネスです。

こうした行動は、今でも親戚や友達どうしではそこら中で行われていることですが、今後はネットを使うことでご飯を食べに来る人が隣近所からも来るかもしれないしアメリカからも来るかもしれない。それくらい大きな可能性を秘めているのです。

“規制緩和が必要”協会の設立

上田社長は去年12月、シェアリングサービスに関連する業界団体=シェアリングエコノミー協会を設立し現在、IT企業をはじめ、JTBや富士ゼロックスなど約80社が参加しています。新事業を生み出すためには、規制緩和が必要だと政府に要望するとともに、ユーザーどうしのトラブルへの対応策についても検討しています。

Q:協会の目的と今後の課題は。

上田:サービスへの理解、必要な規制緩和やルール作りを求めるため政府の産業競争力会議や政党などに対し提言や説明会などを行ってきました。政府には既存の法律にとらわれない全く新しい枠組みでルール作りを要望しています。 業界側としても、サービスを利用する人の本人確認の方法や苦情窓口の設置など自主的にガイドラインを作っていく必要があると思います。

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取材を終えて

現段階では、もうけは追わずにライドシェアを浸透させようという戦略はIT企業らしいスピード感を感じました。エアビーアンドビーやウーバーのように世界中に広がるサービスを日本発で本格展開できるかどうか注目したいと思います。

シェアリングサービスはまだまだスタートしたばかりで、今は”安さ”にのみ関心が集まり、デフレ時代の“節約術”と見られてしまうところもあるかもしれません。ただ、長期的に見ると、今までのような売り手=企業、買い手=消費者という構図を取りはらい、収入の得かた、お金の使い方を変え、ひいては経済活動全体を大きく変えるのではないかー。そんな可能性も念頭に置きながら取材を続けたいと感じました。

野口 恭平
経済部
野口恭平