8月豪雨で崩落 飯豊町の橋 土手削られ橋台バランス崩れたか

ことし8月の豪雨で崩落した飯豊町の橋について、専門家が調査した結果、増水した激しい川の流れによって両岸の土手が削られ、橋を支えていた橋台と呼ばれる部分のバランスが崩れるなどして、橋全体の安定が失われて崩落した可能性が高いことが分かりました。

飯豊町の県道にかかる大巻橋は、ことし8月の豪雨で崩落し、付近で車を運転していたとみられる男性の行方がいまも分からなくなっています。

この大巻橋は、橋の両端にあり橋全体を支える橋台と呼ばれる部分が両岸の土手と接する構造になっていました。

インフラの維持管理に詳しい、日本大学工学部の岩城一郎教授が調査したところ、両岸の土手や道路が大きく削られ、橋台が傾いたり、折れたりしているのを確認しました。

こうした状況から、増水した激しい川の流れによって土手が削られたことで橋台がバランスを崩し、橋全体の安定が失われ、崩落した可能性が高いことが分かりました。

岩城教授によりますと、線状降水帯によって局地的に想定を超える雨が短時間に降り、川が一気に増水したことで今回の被害につながったということです。

また、▽橋の中央付近に設置されている橋脚が上流側に傾いていることから、土台周辺の川底が激しい川の流れによって削り取られたり、▽流れてきた土砂や流木によって橋全体に想定以上の水圧がかかったりするといった、複数の要因が重なった可能性も指摘しています。

岩城教授は「最近、線状降水帯などの水害が相次いでいて、今後も同じような被害が起きるおそれがあることから、橋台を守るなどの対策が求められている」と指摘しています。

【橋の崩落で対策は】
崩落した大巻橋を調査した岩城教授は、橋の水害を防ぐためには、橋台に構造物を設置することが効果的だと指摘しています。

2000年代に造られた橋の両側には、川の流れに対して垂直方向にコンクリートの壁状の構造物が設置されていることが多く、橋台の外側に水が回り込むのを防ぐことにもつながっているということです。

一方、この構造物が設置されていない古い橋については、補強や架け替えの予算は限られているため、行政がどのような対策ができるのか検討を行い、優先順位をつけて対応していく必要があるといいます。

そのうえで、岩城教授はソフト面での対策が重要だとして、大雨などによる水害の可能性が想定できる場合は「何らかの被害を受ける可能性があれば、通行止めやう回路の情報を周辺住民に対して事前に伝えるなどの対応が求められる」と指摘しています。

また、国によりますと、おととし7月の梅雨前線の停滞による記録的な大雨で、熊本県でも橋が崩落する被害が出ているということです。

国は、災害時に支援物資を運ぶ緊急輸送道路の川沿いにある橋の土台部分をコンクリートで補強したり、護岸を整備したりする対策を進めているということです。

【県「構造上の問題なし」】
大巻橋の崩落について、県の幹部は「大巻橋は必要に応じて補修工事を実施していて、構造上の問題はなかった。想定を超える水の流れで、橋台の土台周辺が削られたことで橋が安定性を失い、崩落したとみている」と説明しています。

今後の対応について県は、国の法律に義務づけられた5年に1度の点検を行い、必要に応じて補修工事を実施するとしています。

【大巻橋とは】
飯豊町の県道にかかる大巻橋は、84年前の昭和13年に造られた橋です。

今から55年前の昭和42年の羽越水害で川岸が削られる被害を受けて工事が行われ、橋の長さが24.6メートルまで延長されました。

橋がかかる県道は国道とつながっているため、物流を担うトラックや通勤・通学で行き来する車などで交通量が多い一方、冬には積雪の影響で道幅が狭くなることなどが長年の課題となっていました。

このため、県は大巻橋に代わる新たな橋を架けるなど、バイパスの整備を計画していました。

この計画について、県はことし5月、周辺住民を対象に説明会を開いて整備の計画案を示していましたが、橋が崩落したことによってこの計画は一時的に中断されています。

この大巻橋をめぐっては崩落したあと、県道の通行止めが続いていましたが、仮設の橋が完成し、10月31日から通行ができるようになっています。