石垣島に開設された陸自の駐屯地 防衛相も出席し開設記念式典
沖縄県の石垣島に先月新たに開設された陸上自衛隊の駐屯地で、2日、浜田防衛大臣も出席して開設を記念する式典が行われました。
防衛省は、南西諸島の防衛を強化するとして、先月16日、石垣島に陸上自衛隊のミサイル部隊などが所属する新たな駐屯地、石垣駐屯地を開設しました。
2日は浜田防衛大臣も出席して記念の式典が行われ、この中で、石垣駐屯地の司令を務める井上雄一朗1等陸佐が「地域の島民との関係と絆をより強固なものにするため努力を積み重ね、島と島民を守る抑止力の要として役割をしっかりと果たし続けます」と述べました。
また、地元・石垣市の中山義隆市長は「駐屯地の開設が有事の発生を防ぎ国民の命を守ることにつながると期待している」と述べました。
式典には地元の関係者も招かれ、配備されたばかりの地対艦ミサイルの発射機などが展示されていました。
島の住民の間では開設された駐屯地に将来「反撃能力」として使うことができる「スタンド・オフ・ミサイル」が配備されるのではないかという不安が広がっています。
式典後の記者会見で浜田防衛大臣はこうした懸念について「具体的な配備先はまだ決まっておらず、いまお話しする段階に至っていない。これからどんな状況になるかわからないが、皆さんの懸念を払拭するべく努力していきたい」と述べました。
【浜田防衛大臣】
浜田防衛大臣は、沖縄県の石垣島に開設された陸上自衛隊の駐屯地を訪れ、尖閣諸島周辺などでの活動を活発化させる中国を念頭に、警戒監視に万全を期す考えを示しました。
南西諸島の防衛を強化するため先月16日に開設された陸上自衛隊の石垣駐屯地には、隊員およそ570人が所属しているほか、対艦ミサイルや対空ミサイルなどが配備されています。
現地で、2日、開設を記念する式典が開かれ、浜田防衛大臣は「石垣島を含め南西諸島の隙のない防衛体制は隊員の肩にかかっている」と訓示しました。
石垣駐屯地の開設は、与那国島や宮古島に部隊を配備したのに続くもので、防衛省が、当初、南西諸島に計画していた部隊配備はこれで完了したことになります。
浜田大臣は、記者団に対し、尖閣諸島周辺などでの活動を活発化させ、台湾への圧力も強める中国を念頭に「南西地域への部隊配備は、力による一方的な現状変更を許容しないとのわが国の意思を示し、抑止力・対処力を高めるものだ」と述べ、警戒監視に万全を期す考えを示しました。
一方、石垣駐屯地に「反撃能力」として使えるミサイルを配備するのか問われたのに対し「具体的な配備先は決まっておらず、答える段階にない」と述べるにとどめました。
【抗議活動】
石垣駐屯地の開設を記念する式典が開かれる中、駐屯地の外では、自衛隊の配備に反対する市民などおよそ30人が集まり抗議活動を行いました。
集まった人たちは「ミサイル基地はいらない」とか「石垣島を戦場にしないで戦争回避の外交を」などと書かれたのぼりやプラカードを掲げ、反対の意思を示していました。
そして、市民団体の共同代表2人が石垣駐屯地の井上司令に宛てた抗議文を駐屯地の担当者に手渡しました。
「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」の波照間忠共同代表は「建設がはじまってから3年あまりがすぎ、完成もしていないのに駐屯地を開設させたことは遺憾でなりません。今後も断固として、抗議や要請などは続けていきたいです」と話していました。
また、70代の女性は「自然が好きで15年前に石垣島に移住しましたが、この島の真ん中に軍事基地のようなものを作ることは信じられません。とんでもないことだと思います」と話していました。
【「石垣駐屯地」とは】
「石垣駐屯地」は、先月、陸上自衛隊が石垣島に初めて開設した拠点です。
市街地から離れた島の中央部に位置し、広さおよそ47ヘクタールの敷地内には、隊員の職場や住居となる「隊庁舎」や弾薬庫などが作られているほか、今後は鉄筋コンクリートで覆われた射撃場などの建設も進められます。
駐屯地には隊員およそ570人が配置され、駐屯地の警備や災害時の対応を主に担当する警備部隊のほか、艦艇に向けて発射する射程100数十キロとされる「12式地対艦ミサイル」を備えた部隊、それに航空機や巡航ミサイルに向けて発射する「中SAM」と呼ばれる中距離対空ミサイル部隊などが置かれています。
防衛省は、南西地域における防衛上の“空白地帯”を埋めるとして、沖縄県の与那国島と宮古島、そして鹿児島県の奄美大島に陸上自衛隊の拠点を作ってきましたが、今回の石垣駐屯地の開設で、この地域における防衛強化は1つの節目を迎えたことになります。
駐屯地が新たに作られたことについて地元の住民からは、有事に備えて抑止力が必要だとして容認する意見や、攻撃の標的にされるとして反対する意見が出ているほか、将来的に反撃能力として使われる「スタンド・オフ・ミサイル」が島に配備されるのではないかという不安も広がっています。