「倉敷公害」めぐる住民運動や裁判記録などの資料館開館

倉敷市の水島コンビナートの大気汚染で引き起こされた「倉敷公害」をめぐる、住民運動や裁判の記録などを展示する資料館が10月に開館しました。

倉敷市水島東栄町の商店街の一角に開館したのは、倉敷公害の資料館「あさがおギャラリー」です。
室内には6300点ほどの資料が展示され、ぜんそくの発作を抑えるために薬を吸い込む女性など、当時の様子を伝える写真や、患者が自宅で使用していた医療器具、さらに13年にもわたった裁判の資料などが所狭しと並べられています。
また葉っぱの変化で大気の状態を調べようと、4000人が参加した「あさがお運動」で、市民に届けられたアサガオの種も大切に保管されています。
水島コンビナートから排出された汚染物質で、気管支ぜんそくや慢性気管支炎の患者が相次いだ倉敷公害をめぐっては、昭和58年以降、患者292人が企業8社を相手取って裁判を起こし、13年後の平成8年に、企業側が13億9200万円を支払うことで和解しました。
12月で和解から26年になりますが、認定患者は11月1日時点で849人で、49%が70歳以上と高齢化が進んでいます。
公害の記憶を後世に伝えていこうと、裁判の和解金をもとに設立され環境保全活動などを行う「みずしま財団」が資料館をオープンさせました。
「みずしま財団」の福田憲一代表理事は「展示は、13年にわたり裁判で争われた倉敷公害の現物の資料で、紙のにおいや重さも感じられます。そこに記録された歴史は大切なものです。ぜひ多くの人に訪れてもらい実際に手に取ってほしい」と話していました。
倉敷公害の資料館「あさがおギャラリー」の開館時間は、平日の午前8時半から午後5時までで、無料で誰でも見学することができます。

倉敷市に住む伊達和市さん(84)は「倉敷公害」の公害病患者の1人です。
伊達さんは22歳の時、勤務先のあった水島地区に移り住みました。
当時の様子を伊達さんは「夕方になったら風がパターと止まる『夕なぎ』というのがある。そうすると空が真っ黒になって、卵や玉ねぎが腐ったような臭いがばーっと来た」と振り返ります。
水島に住み始めてしばらくすると、呼吸が苦しくなったり声がかすれたりするようになり、30歳ごろに慢性気管支炎として倉敷公害の患者認定を受けました。
認定を受けてから50年あまり、その間に17回の入退院を繰り返し、現在も毎日の服薬と週1回の通院が欠かせません。
伊達さんは「子供が生まれたあとも、生活するのに給料も安いし、自分が入院したら悪いと思いながら仕事していた。いまでも、運動すると息苦しくて大変なことになるし、夜、寝る時はたんが詰まる」と話しています。
伊達さんは原告にはなりませんでしたが、自分たちの住むまちの空気をきれいにしたいと、会社や国に適切な操業や補償を求める街頭活動に参加。
毎回のように裁判所に駆けつけ傍聴しました。
倉敷公害や裁判の資料が展示された「あさがおギャラリー」の開館について伊達さんは「患者の多くは私のように高齢になっています。水島に住んでいる人でも公害を知らない人がたくさんいる。資料が展示されることは大切なことだと思うし、少しでも歴史を知ってほしい」と話していました。