日南市と諸塚村に派遣の協同組合 人手不足解消に期待

人手不足を解消し移住者の増加にもつなげようと、繁忙期が異なる地域の仕事を組み合わせて年間を通して働けるよう働き手を派遣する協同組合が県内で初めて日南市と諸塚村で発足しました。

県の認定を受けたのは、日南市の「ACにちなん事業協同組合」と諸塚村の「協同組合もろつかわーく」の2つで、30日、団体の代表が県庁を訪れ、認定証が交付されました。

これは「特定地域づくり事業協同組合制度」という国の制度を活用したもので、過疎地域では年間を通じた仕事がないことや一定の給与水準を確保できず、地元産業の担い手不足が課題となる中、繁忙期が異なる仕事を組み合わせて年間を通して働ける場を提供します。

具体的には組合が移住者を中心に正規職員を雇用し、春は宿泊業夏は農業や畜産業などと業種ごとの繁忙期にあわせて人材を派遣します。

県内でこの認定を受ける団体は初めてで派遣職員の人件費や事務局の運営などにかかる経費の半分が国や自治体から助成されます。

ACにちなん事業協同組合の田鹿倫基代表理事は「日南市ではまもなくキャンプが始まるので宿泊施設のベッドメイキングなどに人手が必要になる時期なので、人材を派遣していきたい」と話していました。

協同組合もろつかわーくの菊池隆一代表理事は「諸塚村では家族経営や個人経営が多く、繁忙期が限られる産業が多く年間を通した雇用や安定した給料の支払いが難しいなどの課題があるが、この仕組みでカバーしていきたい」と話していました。

今回2つの団体が認定を受けた「特定地域づくり事業協同組合制度」は過疎地域の担い手確保策として総務省が3年前から始めた制度です。

地域の仕事を組み合わせて新たな雇用の場をつくり、移住や定住を促進することが目的のため、移住者など、できる限りその地域にもともと住んでいなかった人材を採用するよう求められています。

今回、認定された日南市の団体の場合、すでに3人の派遣職員を採用していますが、3人とも県外からの移住者で、このうち1人はこの採用のために県外から移住したということです。

日南市の団体では派遣する業種の1例として4月から6月が宿泊業、7月から9月が農業、10月から1月が畜産業、2月から3月が宿泊業といったスケジュールを想定しています。

このほか、飲食業や酒造業など、あわせて14の事業者が組合員として参加していて、団体はこれらの業種にも働き手を派遣します。

さらに雇用された職員は地域おこし協力隊のような任期はなく、最終的には派遣された組合員の企業に就職するなどしてその地域への定着を目指します。

一方で、年間を通じた仕事がないことや一定の給与水準が確保できないことからこうした制度を利用している実情があるため、呼び込んだ人材をどう活用し、定住につなげているかが課題となりそうです。

こうした団体は全国では今年度までに89の団体が認定され、来年度はさらに増える見込みです。

県内では日南市と諸塚村のほかに10の自治体がこの制度を活用を検討しているということです。