教科書会社「大日本図書」幹部 五霞町の教育長と会食など接待

教科書会社「大日本図書」の幹部が茨城県五霞町の教育長と会食し、飲食代を全額支払うなどの接待をしていたことがわかりました。
教科書会社でつくる団体は教科書採択の関係者への接待を禁止していて、会社は「重大なコンプライアンス違反でおわび申し上げます」としています。

教科書会社「大日本図書」によりますと、ことし7月、役員を務める東日本支社長と茨城県内の営業担当社員の2人が茨城県五霞町の教育長ら2人と会食し、会社側が1人およそ9500円の飲食代を支払い、およそ1600円の菓子も渡したということです。
会社の聞き取りに対し、支社長ら2人は、「教育長がことし3月に校長を退職するころ、慰労の目的で会食の約束をした。取りやめるべきだった」と話しているということです。
教科書会社でつくる一般社団法人「教科書協会」は自主的なルールとして、教育長や教員など教科書採択の関係者への接待や物品の提供などを禁じています。
大日本図書は「重大なコンプライアンス違反で心よりおわび申し上げます。徹底した社内調査と再発防止が必要だと考えています」と話しています。

茨城県教育委員会は、平成29年に各市町村の教育委員会に対し、教科書採択における公正性を確保するため、「時期および名目のいかんに関わらず、教科書発行者または第三者を介して、金銭や物品、労務の提供、もてなしや接待、その他の利益を受けてはいけない」とする通知を出しています。
茨城県教育委員会によりますと、五霞町は周辺の4つの市と町とともに、一つの地区として同じ教科書を採択しています。
この地区では現在、小学校では「算数」「理科」「生活」「体育」の4教科、中学校では「数学」「理科」の2教科で、大日本図書の教科書を使用しているということです。

永岡文部科学大臣は、記者会見で「文部科学省によって、教科書の採択関係者に飲食などを無償で提供した事実が確認され、会社に対して採択の公正確保の観点で詳細な調査を指示している。教科書はすべての児童や生徒が必ず使用するもので、採択には高い公正性と透明性が求められる。今回のことは極めて遺憾であり、今後の調査の動向を注視しながら厳正に対処したい」と述べました。

茨城県五霞町の染谷森雄町長は30日夕方、会見を開いて陳謝しました。
会見の中で染谷町長は「教育長本人に事実確認をしたところ、会食の場をもったことは事実だ」と述べたうえで、「疑念を抱かれるようなことを行ったのは誠に遺憾で、厳正に対処していく。再発防止に向けて綱紀粛正に努めたい」と述べ、陳謝しました。
一方で、町の聞き取りに対し教育長は「教科書会社の営業担当者とは個人的な知り合いという認識で会食に参加した。教材などの営業的なあっせんの話は一切ない」と話しているということです。
また、町の担当者によりますと、教育長は7月の会食の会計の際、同席していた元校長に1万円を手渡し、みずからの飲食代を支払おうとしたものの、教科書会社側に受け取ってもらえず、今月26日になって元校長が、教科書会社の口座に2人分の飲食代合わせて2万円を振り込んだということです。
染谷町長は「教育長が接待を受けたという認識はない」と述べました。