“播但線に乗ろう” 神河町で住民たちが小さな旅のイベント

JR播但線を守ろうと、神河町で、地区の駅から隣の駅まで列車で往復するイベントが開かれ、JRがことし4月、この駅を含む線区の赤字額を公表したこともあり、13日の夜は、これまでで最も多い35人が参加して、小さな旅を楽しみました。

およそ700人の住民が暮らす神河町の長谷地区にあるJR長谷駅は利用者が1日に数人程度で、もっと利用しようと、住民グループ「長谷地区の振興を考える会」が6年前から月に1回、隣の寺前駅まで列車で行って帰ってくるイベントを開いています。
13日夜は、これまでで最も多い35人が参加し、家事や仕事を終えて午後7時ごろに駅に集まり、11分発の姫路方面の上り列車に乗り込み出発しました。
そして、寺前駅に到着すると、すぐに和田山駅行きの下り列車に乗って36分には長谷駅に戻り、25分間の小さな旅を楽しみました。
グループは、地区には通学でJRを利用する高校生がいるほか、商店や病院もないため、駅と線路が欠かせないとしています。
イベントを始めた当初、10人程度だった参加者は声を掛け合うことで徐々に増え、JRがことし4月、長谷駅を含む播但線の赤字額を公表したこともあり、住民たちの間に危機感が広がっているということです。
参加した70代の女性は「毎月参加しています。日頃会えない人に会え、おしゃべりができて楽しいです」と話していました。
グループの大和正美副会長は「過疎の町ですが、駅は生活になくてはならない地域の宝です。多くの人に乗ってもらい、路線を守っていきたい」と話し、今月17日の駅前での納涼祭で、播但線の活性化のための意見交換会を開く予定にしています。

【「輸送密度」が2000人に満たない赤字線区 兵庫県には4路線6線区】
JR西日本はことし4月、1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人に満たない、近畿地方や中国地方、北陸地方にある30の線区の収支を公表しました。
2020年度までの過去3年間の平均の収支はいずれも赤字となっています。
県内にある線区は4路線6線区で、このうち、播但線の和田山駅と寺前駅の間は6億7000万円の赤字でした。
また、山陰線の▼城崎温泉駅と浜坂駅の間は11億7000万円、▼浜坂駅と鳥取駅の間は8億1000万円、加古川線の▼西脇市駅と谷川駅の間は2億6000万円、姫新線の▼播磨新宮駅と上月駅の間は6億2000万円、▼上月駅と岡山県の津山駅の間は4億3000万円の赤字でした。

【新温泉町も鉄道利用促進対策】
新温泉町は、山陰線の利用を促そうと、夏休みに日帰りでJRを利用する町民に片道分の乗車券を配付します。
実施するのは今月30日と来月7日、20日の3日間で、対象は浜坂駅から2人以上でJRを日帰り利用する新温泉町民です。
行き先は、上りが豊岡駅、もしくは城崎温泉駅、下りが鳥取駅で、出発する前に浜坂駅で片道分の乗車券が人数分もらえます。
浜坂駅が通る山陰線の線区は2020年度までの過去3年間平均の収支が赤字となっていて、新温泉町は利用者の増加につなげようとこの取り組みを行います。
新温泉町の担当者は「夏休み中なので、中学生や高校生にも乗ってもらい、鉄道のよさを実感し、愛着を持ってもらいたい。また、日頃マイカーを利用し、鉄道を利用することが少ない子育て世代にも、親子で乗る体験を1つのレジャーと受け止めてもらえたら新たな利用層の開拓になるのではないか。ぜひこの機会に多くの人に利用してほしい」と話しています。