鹿児島で進む6次産業化 その課題と支援の現状は

1次産業が盛んな鹿児島県。生産者がさらに利益を出すため、生産者が加工・販売まで一貫して行う「6次産業化」が進められています。ただ取材を進めると、6次産業化のさまざまな課題も見えてきました。

(鹿児島局記者 熊谷直哉)


【6次産業化とは?】

鹿児島市中心部にある「南州農場」。売れ筋は豚骨ラーメンです。昼どきに訪れたお客は「スープがマイルドですね」「すごくお肉がおいしかった」と話していました。

実はこの店を経営しているのは畜産農家。錦江町を中心にあわせて約6万頭の豚と牛を育てています。育てた豚や牛はみずから工場で加工し、鹿児島市や鹿屋市でラーメンや焼肉などとして提供しています。

1次産業の「生産」。2次産業の「加工」。3次産業の「販売」。これらすべてを生産者が手がけることを1×2×3で「6次産業化」と呼ばれています。

11年前に、6次産業化を推進するための法律が施行され、融資を受けた際の返済の条件が緩和されて以降、取り組む生産者が増加。新型コロナの影響を受ける前の県内の市場規模は900億円あまりで、10年前と比べておよそ170億円増えました。

南州農場は、その中でもいち早く6次産業化に取り組んできました。

(石松秋治 会長)
「消費者の声を直接聞けるというのは、非常に仕事のやりがいとなります。自分たちがやっていることがお客様に評価されるこで、従業員の意識にも関わってきます。6次産業化をして、経営の安定化を進めていこうというのも目的でした」

【6次産業化のメリットと見えてきた課題】

なぜ6次産業化が経営の安定化につながるのか。農業経済に詳しい鹿児島大学の北崎浩嗣教授は「6次産業化のメリットは、まず農林漁業者の所得向上」だと話します。

その仕組みです。

生産者が作った1次産品は、消費者の元へ届くまでに、多くの業者を経由します。利益は関わった業者の間で分けられますが、6次産業化が進むと、生産者にはより多くの利益が見込めるのです。また、業者に買い取られなかった農作物の活用など、ほかにもさまざまなメリットがあるといいます。

(北崎浩嗣 教授)
「6次産業化の場合は、やっぱり主体が農家農業者ですから、その人たちがいかに発想とか、中小の企業とアイデアとかも生かしながら、それを吸収してやっていくか。そういうのはものすごい大事かなと思います」

一方で、課題も出てきています。当初の想定と異なり、売り上げ額が増え、利益が出ている生産者は3割ほどにとどまっているのです。

北崎教授は「6次産業化の2大ハードルは新商品の開発とそれから販路の確保で、新商品の開発も非常に難しいのですが、販路の確保というのはまたより難しい」と話します。

いちはやく6次産業化に取り組んだ南州農場に聞くと、当初はどこで肉を売ればよいのかすら分からなかったと振り返りました。

(石松秋治 会長)
「豚肉を魚屋さん、魚市場に持って行って販売をしていた経験があります。一生懸命やっているから買ってあげようということで買っていただきましたね。買っていただいたのはいいのですが、1週間もたたないうちに返品の山でですね。非常に苦労したこともありました」

【販路を確保するために!県の支援は?】

販路を確保するため、県は様々な支援に乗り出しています。そのひとつが、ことし4月に鹿児島中央駅前に設置した6次化自販機です。県内各地の生産者の商品を買うことができ、1日およそ2万円の売り上げがあるといいます。

6次産業化を成功させるためには、多くのコストがかかります。県は、6次化製品を扱う物産展の開催やアドバイスを行うサポートセンターの設置やクラウドファンディングで財政面も支援するなど、さまざまな取り組みを進めています。

(北崎浩嗣 教授)
「地域でいろんな役割分担をして それから研究機関、行政が一体となって模索していく。そういうことで地域全体で取り組む。それはなかなか簡単にはいかないと思いますが、そういうものは1つ理想として持っておくのは必要かなと思ってます」

【販路の獲得のその先に】

重要だが難しいという販路の獲得。ただ、さきがけて6次産業化を行った南州農場の石松会長は、それだけでは十分ではないと話しています。

(石松秋治 会長)
「店舗に並べることまではみんなできる。それをお客様に支持されて買っていただくというそこがやっぱり非常に難しいんです。自己満足的にいいものを作っていって、こんなものができました。絶対自信がありますって。持って行きたいわけだけど、消費者がそこまで望んでいないかもしれない。やっぱり買っていただけるかどうかですよね」

6次産業化を進めるには、消費者がなにを望んでいるかを考えるマーケティングの視点も必要で多くのハードルがあるのが実情です。しかし、たびたび指摘されるように鹿児島で求められているのは「稼ぐ力」です。そのために取り組む生産者の人たちの努力を、これからも伝えていきたいと思います。