原作者
大島弓子
 「秋日子かく語りき」がドラマ化されることになりました。テレビ用タイトルは「ちょっと待って、神様」と、ポップなスタイルになりました。冬の11時台の放送と言うことなので、たぶん、ほうじ茶などすすりながらコタツにあたり、テレビを見ることになるだろうと思っています。原作は、今思い返しますと、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と反省することしきりですが、ひとたびシナリオライターの手にお渡ししてしまえば、仕上がったドラマは原作とは別なテイストをかもし出し、ワクワクして楽しむことができるのです。2004年の1月、こんな楽しみを与えていただきましたことを感謝しております。

プロフィール
 1947年生まれ。栃木県出身。68年に週刊マーガレット増刊号に「ポーラの涙」が掲載されて以来、数々のヒット作を生み、少女漫画界の第一人者に。代表作は「綿の国星」「ロストハウス」「毎日が夏休み」など。

脚本
浅野妙子

 「秋日子かく語りき」は、かれこれ十年以上前、私がまだシナリオライターとして駆け出しだった頃に、民放の深夜枠で一度だけ扱った作品です。大好きな大島弓子さんの作品群の中でも、とりわけ思い入れの深いこの物語を、もう一度、こうしてドラマ化する機会をいただいたことに、不思議な縁を感じないではいられません。私事ですが、私も物語の中の竜子と同じく、夫と、子供の二人いる身です。結婚十年目を迎えようとするこの頃になって、結婚とは何か、夫婦とは何かを、しきりに考えるようになりました。本当に自分は人を愛し、人に愛されているか——疑ってかかればいかにも脆く、いびつな家族と言う関係の中で、迷いの時期は幾度も訪れるものだと思います。私と同じように、そんな迷いを抱いて生きている人たちの心を、このドラマが一瞬でもささやかな光で照らすことが出来ればと願っています。

プロフィール
 1961年生まれ。神奈川県出身。CX「ラブ・ジェネレーション」「ミセス・シンデレラ」など民放ドラマの第一線で活躍。最近は「大奥」で時代劇のジャンルでも評価を得る。NHKドラマは今回が始めて。


  音楽
小六禮次郎
 1949年生まれ。岡山県出身。東京芸術大学音楽学部作曲家卒業後、直ちに第一線の作曲家、編曲家としてデビュー。映画やCM音楽、ミュージカルと幅広く活躍中。東京音楽大学映画放送音楽コース客員教授として教鞭も執っている。NHKでは、連続テレビ小説「天うらら」「さくら」大河ドラマ「秀吉」ほかを手がける。
 
  制作にあたって
チーフ・プロデューサー
銭谷雅義
 原作「秋日子かく語りき」が発表されたのは1987年、映画「ゴースト/ニューヨークの幻」が封切られる3年前、ちょうどバブル経済が始まった頃でした。携帯電話なんてまだ限られた人しか持っていなかったあの頃の日本──死んだ後で、自分は家族にとって何だったのかと懊脳する主婦・竜子と、生きている手応えが持てない女子高生・秋日子の物語は時代を大きく先取りしていました。家族関係がどんどん稀薄になり、若者が未来への希望を失いつつある16年後の今だからこそ、竜子と秋日子の心情は、いっそう切なくリアルに胸に迫ってきます。厳しい現実に負けるなと二人を応援したくなります。時代が名作に追いついた今だからこそ、このドラマをみなさんに見ていただきたいと思う所以です。
 
  演出にあたって
チーフ・ディレクター
西谷真一
 誰にも死は訪れる。その突然の来訪者に心構えができている人はそうはいない。しかし自分の意志で生まれたわけではない「人間」も、死の「時」の覚悟をすることで、自分と言う商品に蓋(ふた)をすることはできる。その時が「自分」の締めくくりであり、「自分」の完成と言えるだろう。このドラマは50代半ばで突然死を迎え、心の整理をつけられなかった一人の主婦が、何週間かの死への執行猶予の中で、自分を作り上げ、死を覚悟していくものである。全20回のドラマを見終わった人々が生きている間に死を受け入れる心の安寧を抱いていただければ幸いである。
 
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