ドラマのみどころ

〜ママは、神さまから贈られた最高の宝物〜
 

 高度成長期の60年代、ほとんど誰も四川料理を知らなかった時代に四川料理の店を出し、メニューの一つ「マーボー豆腐」を今では子供でも知っている人気料理にまで育て上げた、夫婦のサクセスストーリー。 国際結婚をした中国人、陳建民と日本人、洋子を描いた吉永みち子の原作を、涙と笑いの人間ドラマに仕立てます。




原作者のことば…吉永みち子
 ノンフィクションとして取材を重ね、文章を通して表現した作品が、テレビの連続ドラマとして生まれ変わるというのは、なかなかにエキサイティングなことです。違う登山口から登り始めて、頂上で再会できる楽しみで心が躍っています。主人公は、ひと言で言うと、様々なことに垣根のない女性でした。国籍の壁も、血縁に縛られた家族観も、文化の違いも、味覚の差も、「それがどうした」とばかり飲み込んでしまうのです。だから、活字とテレビドラマの境も然り。どんな味わいになるか、大いに期待しています。



脚本家のことば…前川洋一
 マーボー豆腐を通じて家族を描く。食いしん坊の私としては願ってもない題材と当初は考えていました。しかし、書き進めるうちに厄介な現象が起きることに気づきました。マーボー豆腐、ホイコーロー、タンタンメン等々、四川料理を頭に思い浮かべて書いていると、腹が減ってくるのです。
 今回の執筆は食欲との戦いでもありました。脚本を書いている当人がそうなのですから、ドラマを観て下さる方は、言わずもがな。マーボー豆腐をめぐる人間模様に笑って、泣いて、感動して、さらに食欲も増す。これは贅沢なドラマです。



制作にあたって…安原裕人
 中国料理は火にかけたら一気に仕上げるものが多いそうです。つまり、材料の下味つけが大切。そのとき材料に調味料を加えてただ混ぜればいいのではなく、指で優しく丁寧にかき混ぜながら材料に徐々に味を含ませる、こうすれば肉なども柔らかくなるということです。ドラマ作りも同じで、仕込みが肝要です。キャスティング、台本と、涙と笑いの人間ドラマを目指す究極のメニューの素材がそろいました。四川料理の味の特徴は、マー(麻)とラー(辣)、しびれるような辛さです。涙がこぼれるほどこの作品にしびれていただけるよう、クランクインに臨みたいと意気込んでいます。



演出にあたって…赤羽博
 昭和30年半ばというと私がランドセルを背負い小学校に通っていた頃(あくまでもアバウトにしておこう)。めんこ、ビー玉、ベーコマ、etc。ボールと木の枝でもあれば近所の仲間がすぐに集まって三角ベースの野球、遊び場なんてどこにでもあった。陽が沈む迄、母親が呼びに来る迄、本当によく遊んだ。あの黄昏時が懐かしい。陽が沈まなければ永遠に遊び廻っていたかもしれない(もっとも、松坂慶子さんのような母親だったらすぐ帰ったかもしれないが)。しかし体を動かせば動かすほど腹が減る。だから仕方なく足は家へと向かう。卓袱台の上には焼かれ過ぎた魚の干し物と納豆(うちでは、なぜか夕食に納豆が並ぶのである)。ああ、それなのに陳さんの家では、当時滅多に食することが出来ない四川料理のマーボー豆腐にホイコーロー、etc。私も陳家に生まれていたら、中華の鉄人になっていたかも。それにしても、当時、母親は一日中働いていたような気がする。昭和の大人は働き者だ。そんな時代を背景に、四川料理を日本に広めた、そして「料理は愛よ」と言いきる陳建民さんとその建民さんから、「ママは神様が私にくれた最高の宝物」といわれた妻の洋子さんの生き様を、過ぎ去った時代ではあるが、それを大切に拾い集めリサイクルし、現在にも通ずる感動を、平成のちょっと元気のないお父さんとお母さんに送りたいと思います。
燃える時に燃えればこそ歳をとるのが許せるんです。その時人間ってのは心から笑えるんです。寂しいですよ、笑えずに老いていくのは。天国から洋子さんと建民さんの高笑いが聞こえてくるようだ。  



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夏の日の恋は別の顔