2006年5月27日、6月3日放送

Vol.09 古川 登志夫さん
(『機動警察パトレイバー』篠原遊馬役)



(聞き手:かかず ゆみ、吉田 智則)
--篠原遊馬というキャラクターと最初に出会ったときの印象は?
古川:遊馬は警察官ですから、正義感が強い、とか、実直である、といった性格を背負わされているわけです。けれども、見たところは、日本全国どこにでもいるようなお兄さん、という感じでした。
--『うる星やつら』の諸星あたるとは180度違うキャラクターですよね。遊馬のようなタイプはどうでしたか?
古川:僕は、声が非常に軽薄なもので(笑)、あまりマジメなキャラクターは得手ではないんですが……あたるとはだいぶ違うなあ、とは思いましたよ。
--演じるにあたって、音響監督などから注文や助言はありましたか?
古川:まず最初に全体のレクチャーを受けるんですが、その時に、遊馬というのはアニメのキャラクターだけれど、なるべく生身の人間がごく普通にしゃべっているようにお願いします、と言われました。ナチュラルに演じてほしい、ということですね。
--実際、TVシリーズでは、ごく日常的なシーンが多いですよね。ロボットものだからといって、アクションばかりではない。
古川:そうなんです。
--どんな工夫をしましたか?
古川:どうしても、「声優は感情表現をする仕事だ」という面があります。その上アニメのキャラクターですから、表情にもアクションにも、とても激しい変化がある。これに対応しようとすると、どうしても演技過剰になりがちなんですね。そこをなんとかナチュラルに、リアルに演じる必要がありました。工夫と言えるかどうかわからないけれど、僕がもっともよく知っている生身の人間は、僕(自身)です……つまり、「篠原遊馬は、古川登志夫でやろう」と居直っちゃったんです。これまでいろいろな役をやらせていただきましたが、遊馬は、普段の僕のしゃべりに一番近いです。
--野明はどんな存在ですか?
古川:コンビなんだけれど、恋人というわけでもないんですね。いわゆるアニメ的なヒーローとヒロインの関係というよりは、友達とか妹、時によっては戦友です。捕り物のシーンなどでは--あ、「捕り物」って古いなあ(笑)--危険な場面にも遭遇するわけですから、やっぱりそういうときは共に戦う戦友です。もちろん若い男女ですから、恋愛場面、疑似恋愛的な場面もないではないんです。でも、それをあまり前面に出してしまうと、このカップルのさわやかさが半減しちゃうような気がする。パトレイバーの世界から離れてしまうような気がするので、あまり前面には出さないようにしました。
--アフレコの現場はどんな雰囲気でしたか?
古川:和気あいあいで、楽しいスタジオでしたよ。ただ、収録になれば緊張する……というか、みんなしのぎを削るように、競うようにしてナチュラルな演技をめざす、という感じでした。パトレイバー独特の緊張感に満ちてましたね。
--冨永みーなさんの印象はどうでしたか?
古川:実は僕、みーなさんがすごく小さいころから知っているんです。「大草原の小さな家」のレギュラーでご一緒したことがあるんですよ。しばらくぶりにお会いしたら、急に立派なレディになっていて、なんだかタイムワープしたようでびっくりしました。チョコレート持って、スタジオを走り回っていたあの子がねえ……と、なんだか特別な感慨がありました。いっしょにまた仕事をさせていただけたのが、とてもうれしかったです。
--お気に入りの女性キャラクターは?
古川:野明はおいといて……(笑)、まず香貫花・クランシー。冷静沈着、クールな物言いとクールな髪型に、切れ長の目。ハードボイルドな雰囲気で、とても魅力的ですね。あとは南雲しのぶさん。声優さんの声の作りかたもよくてね、ため息を吐きながら話すような感じが、大人の女性、という感じでこれも魅力的ですね。熊耳武緒もよかった。女性のキャラクターはみんな好きですね。
--大人の女性、という感じがお好きなんですね。そのへんは諸星あたるに近いような気も……。
古川:いや、ホントの僕は、あたるとは違うんですよ(笑)。
--男性のキャラクターについては、いかがですか?
古川:これまた全部面白い。特に後藤隊長。ナチュラルといえば、これほど素晴らしくナチュラルな人はいない。たとえば、何度も相手役のしのぶさんを呼ぶシーンがあるんですが、「しのぶさ〜〜ん↑」って、なんかこう力抜くんですよ。フェイントかけられたような感じになってね。じゃあ、のんびりしたキャラクターなのかというと、そうではなくて、本当はカミソリのように切れる人なんですよね。その落差に魅力があります。
--最後に、遊馬は古川さんにとって、どんな存在ですか?
古川:声優として、出会ってよかったと思うキャラクターです。ナチュラルで生活感のある演技というのは本当にむずかしいものです。矛盾するように思えますが、「演じること」は「表現しないこと」かもしれない、というようなことまで考えさせてくれたキャラクターです。いろんなことを勉強させてくれたキャラクター、それが篠原遊馬です。